停電の夜の地図
LOG
制作日誌
「使う」に、新しく「ツール」の段をつくり、漫画づくりのための無料ツールを二つ置きました。ツールへ
ひとつは「ウツシ」。教室や自室、図書館などの部屋を、ガチャを回して立体の背景として組み立て、線画やトーンの下絵にします。写真や絵からも作れます。ウツシへ
もうひとつは「コマワリ」。コマ割り、吹き出し、描き文字、集中線で、漫画の1ページを組み立てられます。ウツシで作った背景を、コマの形に切り抜いて入れることもできます。コマワリへ
その日に実際にやったこと。
STORY · 創作
創作日記
創作(フィクション)
冷蔵庫の音が、ふっと止んだ。
続いて天井の灯りが消え、パソコンの画面が一拍遅れて暗くなった。窓の外を見ると、向かいのマンションも、通りの街灯も、そろって黒い。遠くの大通りのあたりだけが、ぼんやりと明るかった。
引き出しを手探りして、いつかの誕生日にもらった蝋燭を見つけた。マッチを擦ると、部屋がゆっくり戻ってくる。ただし、昼とはまるで違う部屋として。
炎の届く範囲だけが、この部屋のすべてになった。机の角、湯呑み、読みかけの本の背。その外側は、輪郭のない暗がりだ。毎日見ている本棚が、どこから始まってどこで終わるのか、急にわからなくなる。
蝋燭を持って、台所まで歩いてみた。廊下の壁に、自分の影が大きく揺れてついてくる。冷蔵庫の扉に貼ったままの、古い町内の地図が、炎の色に染まって見えた。普段は目にも留めない紙だ。指でなぞると、角の煙草屋がまだ載っている。もう何年も前に閉めた店なのに。
暗いと、ものは一つずつしか見えない。一つずつしか見えないから、一つずつ思い出す。
四十分ほどして、冷蔵庫がぶうんと唸り、灯りが戻った。部屋は一瞬で、いつもの広さに戻った。少しまぶしくて、少し物足りなかった。
蝋燭を吹き消す前に、地図の煙草屋のところに、鉛筆で小さく丸をつけておいた。
この文章は創作(フィクション)です。登場する出来事や人物は実在のものではありません。