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綴る · 日記 — Writing · Diary

2026年10月17日(土)LOGSTORY · 創作

衣替えの箱

LOG

制作日誌

サイト全体の見た目を、一日かけて新しくしました。墨のような黒と生成りの文字、真鍮色をひとさじ。昼・夜・自動の三つから、明るさを選べるようになっています。トップへ

トップの最初の一画面には、都会・邸宅街・山と湖・断崖・田園の五つの景色が、ゆっくり入れ替わります。「観る」をはじめ、遊ぶ・読む・使う・綴る・仕事・私について・相談の各部屋も、同じ型にそろえました。箱や影を使わず、細い罫線と余白だけで区切っています。観るへ

その日に実際にやったこと。

STORY · 創作

創作日記

創作(フィクション)

押し入れの上の段から、衣替えの箱を下ろした。

蓋には去年の自分の字で「冬・上」と書いてある。開けると、防虫剤の匂いと一緒に、厚手のセーターが三枚、きちんと畳まれて出てきた。畳み方が、今の自分よりずっと丁寧だ。去年の春の自分は、よほど時間があったのだろうか。

一枚目を広げると、袖口に小さな紙片が挟まっていた。映画の半券だった。題名は滲んで読めないが、日付は二月の終わり。誰と観たのかも、どんな話だったかも思い出せない。ただ、帰りに雪が降っていたことだけは、なぜか覚えている。

二枚目のポケットからは、どんぐりがひとつ。三枚目からは何も出てこなかった。何も出てこないことに、少しがっかりしている自分がいて、可笑しかった。

夏物を代わりに詰めながら、ふと思い立って、メモ用紙に一行だけ書いた。「来年の自分へ。今年の秋は、風の匂いがよかった」。それを麻のシャツの胸ポケットに入れて、蓋を閉める。

半年後、この箱を開けるのは、今日の自分のことを半分くらい忘れた誰かだ。その人が紙片を見つけて、首をかしげる。何のことだろう、と思いながら、それでも少しだけ、窓を開けたくなればいい。

箱を押し入れに戻すと、ちょうど夕方の風が入ってきた。たしかに、いい匂いがした。

この文章は創作(フィクション)です。登場する出来事や人物は実在のものではありません。

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