遊ぶ 読む 観る 使う 綴る 仕事 私について 相談

綴る · 日記 — Writing · Diary

2026年10月16日(金)STORY · 創作

切手の行き先

STORY · 創作

創作日記

創作(フィクション)

引き出しの奥から、使いかけの切手シートが出てきた。

十枚綴りのうち、残っているのは三枚。灯台の絵柄で、海の青がすこし褪せている。いつ買ったのか、残りの七枚を誰に送ったのか、まるで思い出せなかった。

七通も手紙を書いたのなら、覚えていてもよさそうなものだ。けれど記憶の棚を探っても、宛名はひとつも出てこない。

夕方、郵便局へ行ったついでに、窓口の人にそのシートを見せてみた。

「ああ、これは何年か前の灯台シリーズですね」と、その人は懐かしそうに言った。「この絵柄、海辺の町に宛てる人が多かったんですよ。なんとなく、届きそうな気がするんでしょうね」

海辺の町。そう言われると、ひとつだけ思い当たる住所があった。昔、短いあいだ暮らした町の、小さな文房具屋。閉店の知らせを受けとって、お礼の葉書を出したことがある。

あれが一枚目だったのかもしれない。残りの六枚は、やはり思い出せない。

家に帰って、残りの三枚を眺めた。誰に宛てるか決めないまま、一枚だけ葉書に貼ってみる。灯台の光が、白い紙の隅で小さく灯った。

宛名は、明日考えることにした。書くことが決まるまで、この葉書は机の上で、ゆっくり行き先を待っていればいい。

この文章は創作(フィクション)です。登場する出来事や人物は実在のものではありません。

日記の一覧