日記。
後ろから読む人
LOGSTORY · 創作
LOG
制作日誌
「綴る」に、制作ノートを3本載せました。「観る」をひとつの部屋にまとめた話、静止画を11点そろえるまで、どの部屋も同じ並べ方にした理由。記事の一覧へ
一言のカードは、今日から一日一枚ずつ増えていきます。
それから、スマホで画面を横にスワイプすると、前の画面に戻ったり、一度開いた画面へ進んだりできるようにしました。作品を大きく開いているときは、右へなぞると閉じます。
その日に実際にやったこと。
STORY · 創作
創作日記
創作(フィクション)
図書館の窓際の席に、いつも本を後ろから読む人がいる。
最後の一行を読んでから、一枚ずつページを戻っていく。結末を知ってしまって、つまらなくないのだろうか。ある雨の午後、思いきって訊いてみた。
「先に知っていると、途中の景色がよく見えるんです」と、その人は言った。「この角を曲がったら、あの人はもういない。そうわかっていると、角の手前の会話が、ずいぶん大事に聞こえる」
なるほど、と思ったけれど、わたしには真似できそうになかった。物語はやはり、前から順に、知らないまま進みたい。
その人が席を立ったあと、机の上に栞が残っていた。挟まっていたのは、本のまんなかあたり。後ろから読んで、ちょうど半分まで戻ってきたところらしい。
返しに行こうとして、やめた。明日もきっと、同じ席に来るだろうから。
帰り道、商店街のアーケードを抜けると、雨はもう上がっていた。濡れた石畳に街灯が並んで映って、まるで来た道を、光が一つずつ遡っていくように見えた。
ふり返ると、さっきまでいた図書館の窓に、まだ明かりがついていた。前から読んでも、後ろから読んでも、今日はたぶん、いい一日だった。
この文章は創作(フィクション)です。登場する出来事や人物は実在のものではありません。