日記。
種の番号
LOGSTORY · 創作
LOG
制作日誌
アートを「遊ぶ」から「観る」へ引っ越しました。観るは、映像・静止画・コードで描く絵の三つの段になり、静止画には画像生成AIで制作した11点が並んでいます。コードで描く6点は、開くと動き出し、押すたびに別の絵になります。
ほかに、各ページの大きな見出しを「遊ぶ。」「観る。」のような日本語にそろえ、使うではどのテンプレートからもデモ・ダウンロード・応援購入へ進めるようにしました。
その日に実際にやったこと。
STORY · 創作
創作日記
創作(フィクション)
駅の裏の坂を下りたところに、種だけを売る店がある。
紙の小袋が引き出しにぎっしり詰まっていて、袋の右下には、店主が細い字で番号を書いている。花の名前は書いていない。
「名前は、咲いてから付けてください」と店主は言う。
番号が同じ袋からは、同じ花が咲くのだそうだ。色も、背丈も、葉の向きまで。違う番号なら、同じ品種でも少しずつ違う花になる。店主はそれを、何十年もかけて確かめてきたらしい。
わたしは三一七番を選んだ。理由はない。強いて言えば、数字の並びが階段のように見えたからだ。
帰り道、袋を振ると、中で小さな粒がかすかに鳴った。まだ何色でもない音だった。
ベランダの鉢に蒔いて、水をやる。芽が出るまで二週間。咲くまでは、もっとかかる。そのあいだ、三一七番はわたしにとって、ただの番号のままだ。
もし気に入らなかったら、また店に行けばいい。引き出しには、まだ開けていない番号がいくらでもある。同じ番号をもう一度選べば、同じ花がもう一度咲く。
それを思うと、少しだけ気が楽になる。うまくいかなかった日も、番号さえ覚えていれば、やり直せるのだから。
窓の外で、十月の風が鉢の土を乾かしていく。わたしは袋の番号を、手帳のいちばん後ろに書き写した。
この文章は創作(フィクション)です。登場する出来事や人物は実在のものではありません。