窓の内側の模様

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制作日誌
「観る」の静止画に、壁紙シリーズ「CODE OF MEMORY」の二作目「雪に埋もれていく記憶」の見本を加えました。購入は BOOTH から。見本には、全体に斜めの透かしを入れ、作品の説明も添えています。静止画へ
その日に実際にやったこと。
STORY · 創作
創作日記
創作(フィクション)
窓ガラスの内側に、細かい模様ができていた。
朝、カーテンを開けると、ガラスの下のほうだけが白く曇っている。夜のうちに冷えた外の空気と、部屋の暖かさがぶつかって、水滴が小さな粒になって並んだのだろう。その粒が、ところどころで流れ落ちて、細い線を引いている。
近づいて見ると、線は一本一本、違う道を通っていた。まっすぐ下りるもの、途中で隣の粒とつながって太くなるもの、ある所でふいに止まって、そこから先へ行かないもの。誰かが描いたわけでもないのに、地図のように見える。
子どものころ、冬の朝になると、こういう窓に指で絵を描いた。猫の顔や、自分の名前。描いたところだけ透明になって、外の景色がそこから覗く。親に、窓が汚れると叱られても、次の朝にはまた描いていた。
今朝は、指で触れるのをやめておいた。この模様は、夜のあいだに部屋と外とが少しずつ話し合って、できあがったものだ。そこへ自分の線を足すのは、なんとなく、ふたりの会話に割り込むようで気が引けた。
お湯を沸かして、窓の前で飲んだ。陽が差してくると、白い曇りは下のほうから少しずつ薄くなっていく。流れた線の跡だけが、しばらくガラスに残っていた。
昼ごろには、窓はすっかり透明になっていた。何もなかったような顔をしている。
明日の朝も、同じくらい冷えるらしい。また別の地図が描かれるのだろう。今度は少しだけ、端のほうに、小さく自分の線を足してもいいかもしれない。
この文章は創作(フィクション)です。登場する出来事や人物は実在のものではありません。